11月定例研修会報告

 

【日 時】2020116日(金)19:0021:00

【テーマ】 PSWの価値・倫理を学ぶ

【講 師】野村 理彩氏(訪問看護ステーション Gステーション)

【参加者数】20

 

今回の研修では、新人フォローアップ研修の第2回としてPSWの価値・倫理をテーマに、訪問看護ステーションGステーションの野村理彩氏にお話をして頂いた。まずはじめに、自分にはこちらの方がしっくりくるという事で、今回はMHSWではなく、PSWを使用したいとのことであった。野村氏は、PSWとして働き始めた当初は、PSWの専門性を考える余裕はなく、時間が過ぎて行ったと言う。しかし、その後先輩の勧めもあり、県協会の役員をしたり、“倫理ガイドライン”作成委員をすることにより、所属機関を超え、年代もバラバラの方たちと出会い、PSWの専門性について深く考えるようになっていったとのことであった。

PSWの価値・倫理とは、専門性を構築するもの(価値・倫理・知識・技術)の一つである。知識や技術を身に付けることが専門性を高める事につながると思いがちだが、これは初任者の頃に陥りやすい誤認識である。価値・倫理はPSWとしての根っこや土台であるため、ここがしっかりしていないと、いくら知識や技術を積み上げても専門性を高められない。

ここで、PSWの価値をみていく。1つ目は「人権の尊重」。差別や偏見をしないということだけでなく、失った自尊心を取り戻すことや人としての根源の部分が揺るがされていないかということにも及んでくる。2つ目は「人と状況の全体性で捉える」こと。その人自身が困っていることは、その人個人の問題ではなく、社会全体の問題であるとの認識を持つこと。対象者へのアプローチだけではなく、その周りへのアプローチをするのもPSWである。ここで、野村氏は対象者をパズルのピースの一つとして例えた。医者や看護師は元あった所に戻れるように本人の形を出来る限り元の形に整えていく。しかし、PSWは元の形から変わったピースが上手くはまるように周りの形を変えていく、とのことであった。3つ目は「生活者として捉える」こと。医者や看護師は対象者を患者さんと捉え、疾患や障がいにスポットを当てるが、PSWは生活者として捉え、生活全体にスポットを当てていく。4つ目は「自己決定の保障」。支援者の価値観の押し付けになっていないか。本人とPSWの意見の相違を説明し、よりよい自己決定が出来るように支援する。好ましい結果にならなかったとしてもその結果を一緒に受け入れる。そうすることで、安心して自己決定が出来るようになるのだ。

そして、倫理とは、価値を実現するための行動規範である。①本人に対する責務、②専門職としての責務、③機関に対する責務、④社会に対する責務がある。これは、野村氏も関わった「精神保健福祉士の倫理ガイドライン」に分かりやすく掲載されている。野村氏は、ガイドライン作成に携わることで、日々の業務の中でも“倫理”を意識するようになっていったとのこと。“倫理”と聞くと難しく聞こえるが、身近な物であり、業務を行っていく道しるべである。これはおかしい、という気付きができるし、どうすればいいのか助けにもなる。

最後に、価値・倫理はPSWとしての土台で、ここをしっかり培うこと、と再度話された。また、人は弱く、一人で振り返ることは困難で、第三者の目が必要である。そして、経験年数関係なく、考え続けていく事も大切。主体的に自己研鑽の場に出ていく事もPSWの倫理のひとつではないだろうかと語られた。

参加者からは、「自己決定を支援するのが難しい状況で、悩みながら働いている」という話がでた。確かに、ご家族さんの意見が強い家庭であったり、ご本人さんが決めきれずにいたりなど、様々な状況がある。しかし、その中で、一緒に揺れ動くことも支援なのではないかと野村氏は提案した。「自己決定を支援する」ことを目標にかかわりながら、それまでの過程を大切にする。そんな野村氏のPSWとしての専門性を垣間見ることができた。また、野村氏以外にも他職種と一緒に働く上で、視点の違いで悩んでいる参加者もいた。そういった時にこそ、PSWの価値・倫理が重要である。また、どんな状況でも、それを持っていることで、PSWとして仕事をしていくことができると話された。

今回の研修で、倫理・価値とは何なのかを知ることができ、そしてその重要性も共有することができた。日々変わりゆく社会の中で知識や技術を取得していく事も必要だが、価値や倫理など揺るがないものを再度見直してみるのも専門職としての責務ではないだろうか。

 

報告 大杉 真央(大西病院)