3月定例研修会報告

【日時】2021年3月5日(金)19:00~21:00

【テーマ】精神保健福祉士の倫理を考える~所属機関の中での危機意識編~

【参加者数】16名

 

● 研修報告

 今回の研修では、精神保健福祉士の倫理ガイドラインを用い、PSWの価値・倫理について考察した。

 まず初めに、研修部より倫理についての研修の意義が話された。普段仕事をしていて、職場から求められることと、PSWとしてすべきことの狭間で苦しんでいる人も少なくはないだろう。そんな時に、不満や自分を守ることばかりを考え、ご本人さんにかかわること、“共に考える”ことが置き去りにされてないだろうか。そうやって価値・倫理をすり減らしながら働いている自分に、倫理についての研修は、PSWの想いを継ぎ足してくれるという。日々働いている中で抱く想いや自身の役割など言語化し、PSW同士で考え、研鑽していく。それが明日からの業務を考えていくきっかけになる。そういった意義があるのだということであった。

 そして、ガイドラインを用い、7.所属機関の中での危機意識を読み合わせた。入所施設で金銭管理をしているが、人員不足で管理がずさんになってしまっている。しかし、Aワーカーは何も言い出せずにいる。そんなモヤモヤを抱いている中で、入居者のDさんから、「自分のお金なのにどうして早く出してくれないのか」と苦情が入る所で物語は終わっている。その後、グループワークでの検討に入った。

 自分が同じように疑問を感じた際にどういった対応をしているのか、そして、ご本人さんの権利や利益を守るために今後どのような対応をしていきたいのか、その為に何が必要であるか等について話し合った。まず職場自体の問題があり、そこに声を上げられていないPSWがいる。職場自体の問題については、一人で何とかしようと思うと、困難が生じたり、かなりの勇気が必要。周りを巻き込んでいく事も必要なのではという意見もあった。そして、PSWはまずはおかしいと気付ける感性がある。あとはそれを行動に移すことである。それにしても、職場の経験年数が浅かったり、他職種の方に対してとなると、行動に移すことも憚られることがある。そういった時には言語化して確認し合える仲間が必要である。言い方を工夫したり、自分の行動で見せたりと伝え方を考えるのもいい、といった話も出ていた。また、ご本人さんとの付き合いが長く、親しくなっても、礼儀は必要で、権利を尊重できるPSWでいたいと思う。そのためには、自己点検が必要で、時にはこのような研修で振り返りたいと話される方もいた。

 最後に、会長 齋中氏より総括があった。今年度の当協会のテーマが『思考(創造)力、対話力、行動力の向上~PSW実践における思考(創造)力の深化~』であったが、深化できましたか、との問いかけから始まった。齋中氏は、PSWとして20数年働いてきて、何度も仕事を辞めたいと思ったが、PSWを辞めたいと思ったことはなかった。それは、仲間の存在があったからだという。県協会のテーマである思考(創造)力の深化にも仲間の存在は不可欠である。一人で出来る研鑽もあるが、考えたり、生み出したりするには刺激が必要。PSW同士が支え合い、学び合い、集い合えるのがこの協会研修である。また、PSWの実践力は“知識・技術”と“行動を伴う情熱”、“価値・倫理”の掛け算であらわされるという。前者の2つは1~10の数字、後者は-10~10の数字があるとのこと。いくら知識や技術があっても、価値・倫理がマイナスであれば、結果マイナスなのである。どれも必要な物ではあるが、その位、価値・倫理は重要な物なのである。当協会では、過去には協会員の倫理規定違反があったが、過去の経験値を財産に変えて行くべく、年に1回は倫理に関する研修を行っていきたい。刺激を与えあい、支え合っていきましょうと話された。

 今回ガイドラインを用いるとのことで、まえがきをまずは読んでみた。ガイドライン作成委員会委員長の東川氏が書かれているのだが、素晴らしい文章が書かれてあったので、勝手ではあるがここで紹介したい。

『倫理は「~しなければならない」と天から降ってきて私たちを縛る掟ではなく、私たちが自ら作り出し、意思を持って掴み取るべきものだと考えます。今回のガイドラインでは、それを主体性を持った決意表明として「私たちは~したい」という形で表現しています。(精神保健福祉士の倫理ガイドライン~私たちはこうありたい~より一部抜粋)』

 “価値・倫理”を難しくとらえている人は少なくないだろう。しかし、この文章を読んでもらえると分かるように、決して難しいものではない。こうありたいという想い(倫理)を行動へつなげていくためにも、是非倫理の研修に参加し、想いを伝えてほしい。

 

報告 大杉 真央(大西病院)